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山懐に抱かれて

2019年4月

 幸福なラザロ

  • 監督:遠藤隆
  • ナレーション:室井滋
  • 音楽:増子彰
  • 出演:吉塚公雄、吉塚登志子、浅野都、吉塚公太郎、吉塚恭次、山崎令子、吉塚純平、吉塚雄志、吉塚壮太、吉塚和夫、吉塚淑
  • 配給協力:ウッキー・プロダクション

2019年 日本映画 109分

  • テレビ岩手開局50周年記念作品
  • 平成30年度(第73回)文化芸術祭テレビドキュメンタリー部門優秀賞受賞

NHK朝ドラ「なつぞら」は、十勝を舞台に酪農家で育つ女性を主人公にしていますが、それと重なります。岩手県で「山地酪農」を営む吉塚公雄さんは、東京農業大学在学中に山地酪農と出会い、これで生きると人生を決め、先輩をたよって田野畑村に移住してきました。一家は、母・登志子さん、2女5男の子どもたち。牛舎ではなく、山林を切り開いて植えた芝を食べる乳牛を、のんびりとした環境で育てています。広い土地が必要となる産地酪農は、軌道に乗るまで、年月がかかります。産地酪農をする仲間とともに、貧しさと戦いながら、覚悟と忍耐を持って頑固に産地酪農を続ける公雄さんと家族の24年を、テレビ岩手が追ったドキュメンタリー作品です。


物語

開拓を始めてから10年間は、電気がなくランプの生活でした。今でも、そのときのことを忘れないようにと、一年に一度は、ランプで暮らします。山地酪農の牛の乳の量は、一般の牛の乳の量の1/3だけ。収入は少なく、幼い子どもたちの手もかりた、家族全員で働く酪農でした。長男・公太郎と次男・恭次は、親の喜ぶ顔が見たくて競って仕事をしました。長女の都は、酪農の仕事に忙しい母を助けるため、小さいときから台所に立ってきました。

 山懐に抱かれて
(C) テレビ岩手


みんなの力がなければ、酪農はやっていけません。食事の前に、吉塚一家は、こう祈ります。「おじいちゃん、おばあちゃん、おとうさん、おかあさん、〇〇ちゃん、△△ちゃん、・・・牛さん、ありがとう。いただきます。召し上がれ」。「召し上がれ」まで、答えています。

 山懐に抱かれて
(C) テレビ岩手


やがて子どもたちは大きくなり、長男は、研修のために他の農場へ、長女は高齢者の施設で働くようになり、そこで知り合った男性と結婚しました。牧場を大きくしようとしている父は、長女に農場で働くように求めますが、現金を得る必要があると断ります。その後、夫の実家である岡山へ向かいます。

研修を終えて吉塚牧場に戻ってきた長男は、父に代わって牛乳を届けます。しかし、二人は牛の育て方について、意見が食い違うようになり、険悪な状態に。母は更年期で具合の悪い日が続くようになり、4男が台所に立つようになります。

北海道の大学で畜産を学んだ次男は2012年に結婚し、「俺に俺のやりたいことがある」と言って田野畑村を離れ、家族とともに自分の牧場を経営しています。

2018年、4男の雄志は、山地酪農の乳を使ったチーズ作りを始め、3男の純平は、会社務めの経験を生かして、営業を引き受けています。76歳になった父に、孫は11人。食事の祈りには、多くの名前が付け加わり長くなりました。

 山懐に抱かれて
(C) テレビ岩手


 

純朴に生きる吉塚一家を見ながら、人間が生きるとはどういうことか、成長するとはどういうことかを、子どもが親を超えていくとはどういうことか、吉塚家のそれぞれの子どもたちを見ながら、親から子へと受け継がれていく過程に、感動しました。


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