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春を告げる町

2020年 3月

 春を告げる町

  • 監督・撮影・プロデューサー:島田隆一
  • 音楽:稲森安太己
  • 出演:渡邉克幸、新妻良平、帯刀孝一、松本重男、松本文子、藤沼晴美、福島県立ふたば未来学園高等学校演劇部
  • 配給:東風

2019年 日本映画  130分

  • 第11回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭アジアコンペティション
  • 山形国際ドキュメンタリー映画祭2019ともにあるCinema with Us

  • 助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

東京2020オリンピックの聖火リレーは、予定では3月26日、福島県双葉郡広野町から始まります。なぜ、広野町が選ばれたのでしょうか。

「東京2020オリンピック・パラリンピック」の公式サイトによれば、「東京2020オリンピック聖火リレーは、聖火の光が多くの人々にとって希望の道を照らしだすものとします。」「震災から10年目の被災地も訪れることになり、新しい時代の希望のオリンピック聖火リレーとして、復興に力を尽くされている方々にも、元気や力を届けてまいります。また、震災当時世界中から寄せられた支援や励ましに対し、震災から10年目の日本の姿を感謝の気持ちとともに発信し、困難を乗り越える人々の力・不屈の精神を、しっかりと伝えていきます」とあります。

広野町にはJヴィレッジがあります。ここはアジア初のサッカーのナショナルトレーニングセンターで、男子日本代表のホームグラウンドとして、また、さまざまなチームのトレーニングセンターとして活用されています。3.11後、Jヴィレッジは、福島第一原発事故の収束に向けた最前線の基地となり、修復をして2019年4月に営業を再開しました。「東北に春を告げる町」というキャッチーコピーを掲げる広野町から、福島県内を経て全国へと希望の火は運ばれていきます。

さて、前置きが長くなりましたが、映画「春を告げる町」は、この広野町の人々の生活を追いながら、復興の歩みを探ったドキュメンタリーです。

広野町は福島第一原発から20km圏内にあります。3.11の後全町避難となり、翌年3月31日、避難指示が解除され帰還が始まりました。現在は住民の半分が、廃炉・汚染除去のために働く作業員で占められています。


物語

「復興とは何か?」演劇の中で、復興について舞台を見るお客さんたちと一緒に考える内容にしたいと動き出した福島県立ふたば未来学園高等学校の演劇部の生徒たち。

 春を告げる町
(C) JyaJya Films


3.11の後に生まれた、3人の娘を持つお父さんは消防士。子どもたちが生まれた時は、指があるか足があるかと心配だったが大丈夫だった。お墓参りに来てはしゃぐ子どもたちの声にほほえむ。

ワラビもゼンマイも出ていた山の斜面を見つめる農家の人。JAでは、出荷するお米の放射能を調べている。田植えでは、田んぼの中でカエルがゲロゲロと泣いている。

 春を告げる町
(C) JyaJya Films


福島第一原発を廃炉にするために北海道や東北からやってきた作業員たちが、休憩室に集まっている。みな、家族を残して、単身やってきている。

広野町の祭りが復興の原動力にならないかと祭りの再開を提案した神主さんや、神主さんの意向を受けて動き出した役所の人々と、「やりたい」だけではダメだ、「よし、俺がやる!」と祭りを担う人(=若者)がいないと祭りは成り立たないと、祭りの再開を反対する老人たち。

 

震災から9年目を迎え、復興の力をオリンピック建築に取られながらも、少しずつ通常の生活を取り戻している震災の町。しかし、日常生活のちょっとした穴に、震災の影が垣間見られます。そんな中、震災後に生まれた小さい子どもたちや震災を正面に取り組む高校生たちの姿に、新しい時代がやってきていることを感じます。人間には、大きな苦しみ、悲しみを乗り越えていく力があるのだと。


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