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シスターテクラ・メルロ
第9回 心遣いのこまやかな強い母
イタリーや外国で修道院が増えるにつれ、プリモ・マエストロとプリマ・マエストラには各共同体の様子を自ら確かめ、彼らの精神を鼓舞し、困難に遭遇している姉妹たちを支え、福音宣教の新しいイニシアティブを承認するなどのために、非常に多くの旅行が要求されるようになった。車で、船で、後年は飛行機で旅をしました。使徒パウロのように。
プリマ・マエストラはいつも喜んで、少女のようにいきいきとして旅に出かけました。それは「娘たちに会いに行く」からでした。かつて彼女は、万事に事欠く若い娘たち、ただ持っているのはカリスマにおける固い信仰だけという貧しい娘たちの出発を、深い感動に胸を震わせながら見送ったものでした。今、その娘たちに会いに行くのです。彼女たちの犠牲を豊かに祝福してくださった主に、娘たちと共に感謝の賛歌を歌わずにはいられませんでした。娘たちは実によく成長していました。召命や修道院や普及センターなど、数においても使徒職においても、ところによってはアルバやローマをしのぐほどでした。
プリマ・マエストラが修道院に到着するときの何と嬉しかったことでしょうか! 彼女の来訪がもたらす喜びの何と大きかったことでしょうか! 彼女は、どんなに疲れていてもいつもと変わりなく穏やかで、みんなに母の優しい微笑みを振る舞うのでした。彼女をすでに知っている娘たちは賑やかにはしゃぎ、新しい娘たちは、彼女が自分たち一人ひとりと個人的に知り合おうとしている姿に歓喜しました。たとえ言葉が通じなくとも、みんな、彼女の見透すような眼ざしに魅せられ、信頼と理解を示す優しい抱擁に心がなごむのでした。
来日したSr.テクラ・メルロを歓迎する志願者たち
「町の美しさを見に来たのではありません。あなたたちに会いに来たのです」と娘たちに彼女は言っていました。そして静かに落ち着いて、個人個人との出会いの場を作りました。彼女の関心事は、一人ひとりの霊的生活、果たしている任務、最近遭遇している困難などにあったのです。
プリマ・マエストラは、訪問を通して共同体の状況を知り、そのイニシアティブや使徒的必要性について理解しました。娘たちの健康や食事、衣服にも関心がありました。このようにすべてに関心を持ち、母親独特の心遣いと、体験や役職固有の恵みから来る先見の明のある開かれた目で、これらのことに心を配っていました。
旅行から戻ると、ローマの大共同体に、訪問してきた各国の風俗習慣、発展ぶり、多くの問題など、「学んできたこと」を話して聞かせました。あらゆるところですべての人のもとに行くことはできないと考えると、彼女はひどく悩んだものです。「主を知らない人の何と多いこと! それなのに私たちはこんなに少ない!」と叫んだのは一度や二度ではありません。あるときなど「幾千万の聖パウロの娘たち……父パウロのように熱意に溢れ、司教様の要望を満たすことのできる立派な聖パウロの娘たちがいたならば……」と言っていました。事実、多くの司教がそれぞれの教区に聖パウロの娘を望んでいたのです。