homeこんなとこ行った!>時代を読む~出版業界の歩むべき道とは~

こんなとこ行った!

バックナンバー

時代を読む ~出版業界の歩むべき道とは~

2007/07/09

第20回“東京国際ブックフェアー” 田原総一朗氏講演会

テレビと活字の両方で活躍しているジャーナリストの田原総一朗氏のお話です。出版界にどのようなメッセージ、または、“げき”を飛ばしてくださるのでしょうか?

田原総一朗氏講演会



テレビと新聞の表現の違い

活字を読むにはエネルギーが必要。集中力がいる。読み手が積極的にならないといけない。アクティブになる。それに対してテレビは受け手でよい。パッシブになる。だから、論理的展開は難しい。政策論議になると視聴率は低くなる。

メディアの力が働いている。例として、橋本首相を退陣に追い込んだことを見てみよう。かつて、故橋本首相をテレビ番組に招いて、質問したことがあった。ある内容のことについて質問した。彼は急所を突かれて質問に答えられず、絶句した。汗を流している橋本氏の様子を、カメラは2分間そのまま流した。沈黙の映像が続いた。翌日、このテレビ番組について、新聞各紙は「総理、迷走」と大きな見出しで書いた。テレビと新聞が、それぞれの特長を生かして効果的に影響を与えた例である。

新聞は、テレビと違って橋本氏の困った顔を強烈に伝えることはできない。しかし、テレビは強烈な印象を与えることはできる。しかしテレビは、見終わったら忘れられてしまう。だが、翌日、それを説明し印象づけたのが新聞である。活字は論理を深め、テレビは印象を深める。

テレビはノイズが大切。ノイズが大きな影響を与える。たとえば、故松岡農水大臣の「○○還元水」というときの、「還元水がどうのこうの」が問題ではなく、彼の顔がウソっぽいのだ。この“ノイズ”を上手に使っているのが小泉氏だ。「ワンフレーズポリティックス」である。彼は、パトスで勝負した人だ。パトス、つまり死んでもいい、殺されてもいいという思いが全身に現れている。思いを込めた感情がテレビで表現された。貴乃花の優勝のとき、土俵の上で「感動した!」と叫んだ。これで、テレビを見る者に強烈な印象を与えるのである。

最近、出版界ではあんちょくな本が多すぎる。環境問題の本がたくさん出ているが、しっかりと調べて書いているとは思えない。みな、同じようなことを書いているが、人口、資源、日本人の意識の問題など、取り上げることがたくさんあるはずだ。それらを論理づけるのが活字である。ブームになると、それに押し流されてしまう。それにいかに押し流されないようにするのかが、活字である。

情報がテレビよりもネットで見られるようになってきた。しかし、ネットは情報源がわからない。自分も、ブログでいろいろと書かれているが、雑誌に載った記事に基づいて「田原は○○だ!」と書いている。しかし、その記事に関しては、間違いできちんと出版社からは謝罪を受けたものだが、ネットはそれを知らずに書いている。自分で取材していなからだ。

 


田原氏の講演は、テレビと活字のメディア・リテラシーのような、わかりやすいお話でした。いろいろなテーマを取材している田原氏のすごさを感じました。ブログで一個人が自分の意見を自由に発信できるという時代に、真実を追い求めていくとき、今までとは違った接し方が必要になってきます。情報を受けるときの受け手の質も問われる時代になってきました。

▲ページのトップへ